IEEE International Conference
on Plasma Science
ICOPS-2003


標記会議が2003年6月2日から5日の4日間にわたって,韓国Jeju島(済州島)のロッテホテルで開催されました.なお学会誌Vol.79-08月号に本報告が掲載されます。次回 は2004年6月28〜7月1日)米国ボルチモアで開催される予定です。


堀岡一彦(東京工業大学大学院総合理工学研究科)

 2003年6月2日から5日の4日間にわたって,標記会議が韓国Jeju島(済州島)のロッテホテルで開催された。この会議は,IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers Inc., ; 米国電気電子工学協会)が主催して毎年米国かカナダで開催されていたが,今回(30回目)は北米大陸以外でのはじめての会議となった。アジアで最初の開催ということもあって,韓国基礎科学研究所や韓国原子力研究所に加えて,プラズマ・核融合学会も協賛学会として名を連ねており,佐藤徳芳,山中龍彦両副会長をはじめ多くの関係者が参加した。




ロッテホテル(Jeju島)の裏庭の風景

 Jeju島は,東洋のハワイとして売り出し中とかで,日本からも一日おきに直行便が運行されている。ロッテホテル付近(添付写真)は,リゾートエリアとして計画的に開発され,ラスベガスのホテルを思わせるようなアトラクションがあった。公称総発表論文数は,678とされているが,残念ながらSARSの感染者の数が毎日のように報道されていた時期と重なったため,中国と台湾は自主的に参加を見合わせることになり,招待講演を含めて取り消しになった講演も目についた。それでも,韓国,日本,米国を中心に(旧ソ連,EU,中東など約30カ国から)400名弱の参加者があった。

 この会議では,医療・環境応用やFlat Display Panelと名づけられたセッションが目についたこととそのほとんどが韓国,中国をはじめとするアジアの国々の発表であったことが印象に残った。4日間の会議プログラムは,(1)一会場で全員が参加するPlenaryセッション,(2)招待講演,(3)口頭発表,および(4)ポスター発表で構成されていた。6つの口頭発表,2つのポスターセッションが並列で進行されており,とても全貌を時系列で紹介することはできないが,Plenary講演のみの概観は以下のとおりである。

 第一日目,会議はサムソン電子の研究者による「プラズマ・ディスプレイの研究開発とビジネスの現状」と題する力強い講演から始まった。液晶パネルをはじめとして,あらゆる電気製品の分野で日本のメーカーを凌駕しつつあるサムソン電子の急成長と韓国で精力的に進められているプラズマ応用研究の現状を象徴するような講演であった。午後のPlenary講演では,F.F.Chenが誘導結合プラズマとHeliconプラズマを中心にプロセス・プラズマの物理について解説した。また,グロー放電プラズマによる流体制御についての講演があった。二日目の朝には,「雷の物理」というタイトルのPlenary講演があった。避雷針の先端形状の基準や誘雷といった工学的な話題のみではなくて,雷の物理や球電現象を物理的に考察しながらユーモラスに解説する講演で,多くの聴衆が興味深そうに聞き入っていた。午後は,島内を巡るツアーとバンケットにあてられた。三日目の朝は,「惑星科学の分野へのプラズマ科学の役割」と題して,高強度レーザーやパルスパワーで形成される強結合状態のプラズマ物理と惑星科学との関連が紹介された。午後のPlenaryでは,日本原子力研究所から日本の磁場閉じ込め核融合研究の現状が報告された。最終日は,米国Sandia研究所のパルスパワー技術を利用した高エネルギー密度プラズマ物理の研究の講演があり,阪大レーザーの慣性核融合研究の現状,輻射流体プラズマの物理,核融合プラズマなどの話題が紹介された。

 この会議はIEEE主催であり,短波長光源や電気・電子応用を指向したプラズマの技術的な話題が中心ではあるが,核融合,宇宙・天体,環境応用からプロセス・プラズマ,放電・基礎プラズマなど非常に広範なプラズマ理工学の分野を含んでおり,幅広い分野から参加者がある。日本,韓国,中国がアジアのプラズマ分野の研究活動の中心としての役割をはたして行く必要を痛感するが,プラズマ・核融合学会もこの会議のような幅と奥行きを持てるように,真剣に検討されるべき時期がきているように思う。会議の詳細は,http://ahpe.hanyang.ac.kr/~icops2003/ あるいはアブストラクト集(IEEE 03CH37470)などを参照いただきたい。なお,招待講演と口頭発表の中からセレクションされた発表を中心に,IEEE Transaction on Plasma Science特集号が,来年の4月に発刊される予定である。また,次回(2004年6月28〜7月1日)は,米国ボルチモアで開催の予定である。

(2003年7月18日原稿受理)


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最終更新日:2003.7.28
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