第22回核融合工学シンポジウム(SOFT)


標記会議が2002年9月9日〜13日までヘルシンキで開催されました。以下に会議報告および写真を記します。なお学会誌Vol.79-1月号に本報告が掲載されます。次回 (2004 年) はヴェネツィアで開催される予定です。


 

小西哲之(日本原子力研究所)

 本会議は偶数年隔年にヨーロッパ域内で開催される核融合工学全般にわたる学会で,ヨーロッパ中心とは言っても,アジア,ロシア,アメリカからも広く参加者が集まる。今年はフィンランドのヘルシンキで白夜も終わって初秋の佇まいの2002年9月9日〜13日,開催された。参加国21カ国,正式参加者470名,学会本部によればうち日本人は43名であった。ポスター約400件,招待講演14件,プログラム委員会選出のオーラルが22件で,論文は356提出されている。フィンランドは原子力推進国でかつ廃棄物地層処分プログラムも開始しており,バックエンドや環境安全も含めてすそ野の広い原子力関連研究の活動があって意識も高い。

 大型装置については,ITER(Aymar),JET(Pamela),JT-60(山本)(写真1),W7-AS(Grigull)などの招待講演で現状が報告された。

 炉工学各分野では,ITER工学R&Dをベースにした着実な進展が報告された。特にW7-X用140 GHzジャイロトロンの大出力超パルス化の達成(Thumm)はかなりの性能である。超電導ではITEのTFモデルコイルの試験結果が発表され残留応力の影響が厳しいことが報告された(Mitchell)。ブランケット,ダイバータの研究発表は非常に多く,材料も含めて1/3位を占め,多くがITERの次の動力炉をめざした開発に入っている。欧州ではEUROFER-LiPb関係が中心だが,さまざまな材料ム増殖増倍材ム冷却材の組み合わせで研究が展開されている。ロシアからは直径34 cmのバナジウム球体系の14 MeV積分実験が報告された。動力炉に向けて材料開発のためにIFMIFが必要不可欠であることが共通認識として多くの関連発表があった。

 安全性分野では,社会経済性,環境影響,廃棄物など非常に広範な視野で研究が展開されており,報告が多くレベルが高いことは注目すべきであろう。社会経済性のセッションで核融合が環境と調和する将来のエネルギー源と位置づけられ(Konishi),一方それがいわゆるfast trackム動力炉の早期実用化にも結びついていて,欧州のデモ炉に向けた検討が発表された(Lackner)。エネルギー環境関係の広い視野の分析は招待講演等(Routti, Dユhaeseleer)でも紹介されたが,今世紀後半,地球環境問題とエネルギー供給を両立させるものとの核融合の見方は本SOFTではコンセンサスがあるように思われる。また産業界への技術移転,ITERの建設に向けての技術の継承など,核融合の実用化に向けた地道な工学的取り組みのセッションも組まれ,全体としてITERを通した核融合エネルギー実用化に至る欧州の着実な取り組み姿勢の感じられる学会であった。

 特筆すべきは,ITERのサイト候補地の発表であろう。時をおなじくしてトロントの政府間交渉でサイト条件の報告があったわけであるが,この会議はその一般への公開とコンペティションの最初の機会として企画を組み,高い関心を呼んだ。展示会場では六ヶ所,カダラッシュ,バンデヨスのブースが常設され(写真2),広報活動が行われた。欧州の若い工学系研究者の多い学会だけあって技術的な議論の他にも,住み心地,利便性などさまざまな質問が飛んでいた。また最終日には4サイトから口頭でプレゼンテーションがあり,日本からは青森県副知事が誘致をアピールした。

 次回は2年後,ヴェネツィアで開催される。

(2002年11月5日受理)



写真1

 



写真2


最終更新日:2002.12.6
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