第20回IEEE核融合工学シンポジウム


標記会議が2003年10月14-17日,カリフォルニア州サンディエゴのバヒアリゾートホテルで行われました.学会誌Vol.80-02月号に本報告が掲載されます。

 標記会議が,2003年10月14-17日,カリフォルニア州サンディエゴのバヒアリゾートホテルで行われた。本会議はANSトピカル会合と交互に隔年で開催され,米国内の会議でありながら実質的に核融合工学の国際学会として古い歴史をもつ。しかしながら米国の核融合「科学」志向,ITER脱退による工学研究の長期低落傾向に影響され,90年代までに比べると最近はかなり低調であったことは否めない。加えて,前回は911テロの直後に東海岸で予定されていたため,若干延期したもののその影響で壊滅的状況にあったときく。ところが今回のIEEE/SOFEはこの退潮を食い止め,「帰ってきたアメリカ」を印象づける転回点となったといえる。一年中温暖なビーチリゾートに参加者は200余名を数え,DIII-Dを擁するGA社のスタッフを中心とした主催者側の予想を超えるという喜ぶべき成功であった。ポスターではまだ空席も目立ち,完全には本調子ではないものの,ITERへの復帰を契機に,米国の核融合工学は立ち直りつつあるといえよう。

 プレナリーはDIII-DのBaldwinや,FESACを報告したGoldstonに加え,コンパクトステラレータ,NIF,など米国の核融合研究の展開を反映する多彩な分野をカバーし,燃焼プラズマへの意欲を示した。特にレーザー核融合での工学の充実は,米国に特徴的である。また水素エネルギーへの原子力利用の方向を示したD. Scottの講演が,水素エネルギーイニシアチブを中心とする新たな米国のエネルギー観を示して興味深い。エネルギー源としての核融合の価値の説明は,どの国でも重要になっている。

 一般講演でもAPEX/ALPSを初めとするチェンバー工学,特に液体壁概念に関連した一連の発表は着実な進展を見せている。ITER工学R&Dの成果が大きな割合を示すEU等とは違い,米国では加熱,材料,電源,新概念など,ITERに直接関係しない分野での発表も多くみられる。TBWGの再開を受けたブランケット関連研究は,ITERへ復帰した米国を含めて活気が出てきたが,テストブランケットモジュールをめざした研究開発の具体化と体制作りが今後本格化するものと思われる。

(写真提供:原研神永氏,関西大大澤氏)
author's email:s-konishi@iae.kyoto-u.ac.jp
(原稿受付:2003年12月22日)

写真1 オーラルセッションの様子







写真2 会場付近




写真3 ポスターセッション





最終更新日:20034.1.9
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