第15回高周波電力のプラズマへの
適用に関するトピカル会議


標記会議が2003年5月19日から21日までワイオミング州のGrand Teton国立公園内にあるMoranのJackson Lake Lodgeで開催されました。以下に会議報告および写真・資料等を記します。なお学会誌Vol.79-07月号に本報告が掲載されます。次回 は2005年に開催される予定です。




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久保 伸,斉藤 健二(核融合研)
前川 孝(京大院エネ科)
高瀬 雄一(東大新領域)
桧垣 浩之(筑波大プラズマ)
諫山 明彦(原研)
梶原 健(ORISE(General Atomics))
 

 米国物理学会(APS)主催の表記国際会議が2003年5月19日から21日まで,美しい渓谷と自然に囲まれたワイオミング州のGrand Teton国立公園内にあるMoranのJackson Lake Lodgeにおいて開催された(写真は会議場近くから撮ったグランドテトンの山並みとジャクソン湖)。総発表件数は110件(レビュー講演3,招待講演18,ポスター発表89)で参加者はリストによると113名(米国68,フランス10,ベルギー7,日本6,ドイツ6,イギリス6,スイス2,イタリア1,チェコ1,中国1,韓国1)となっており,ほぼ,二年に一度開催されてきているこれまでの会議と同程度の規模でおこなわれた。プログラムは開催された3日間とも朝一番に1時間のレビュー講演があり,昼食をはさんで3時まで(最終日は午前中で終了)招待講演,引き続き6時までポスター発表が行われた。

 全体を通した印象は,電子サイクロトロン加熱の領域では,DIII-D,Tore Supra,TCV,JT-60U,ASDEX-U,LHDにおいて,加熱電力が数メガワットの領域に達し,放電の制御や輸送解析のツールとして益々重要性が増していること,また,ここ数年の傾向であるが,球状トーラスやRFPなど,低磁場高密度の閉じ込め装置に適した電子バーンシュタインモードの加熱と放射測定が注目を集めており,理論,実験とも多くの発表があった。低域混成波とイオンサイクロトロン加熱の領域ではこの周波数領域での波動,モード変換,吸収,電流駆動,流速駆動のモデル化が進み,特に,JETやTore Supra,などでは加熱の高精度化とこれを用いた先進トカマク運転の試みなどの実験,およびその解析が目立った。ハードウェアとしてはITERへ向けたアンテナの検討が多く見られた。

 レビュー講演は初日が, R.L.Merlino(Univ.of Iowa)による“Waves and Instabilities in Dusty Plasmas”でナノ〜マイクロメートル程度の固体粒子と電離気体が共存した状態であると定義し,宇宙に偏在する様々な例を挙げた後,この固体粒子が帯電することにより起因する新たな波動を理論と実験の両面から解説,紹介した。二日目は,H.P.Laqua(IPP-Gleifswalt) による“Electron Bernstein wave heating and current drive in fusion plasma”で,Bernsteinモードの物理的,歴史的な背景から説き起こし,トカマクやステラレータでのこれまでの実験データを紹介した後,最近のW7-ASでの成果まで,丁寧かつ包括的な解説がなされた。最終日は,P.T.Bonoli(MIT)による“Lower Hybrid Current Drive: An Overview of Simulation Models, Benchmarking with Experiment, and Predictions for Future Devices”でITERにおいてもoff-axisの電流分布制御にはLHCDが不可欠であることを強調し,これまでの実験結果をもとに発展してきたLHCDのシミュレーションのモデルを包括的に紹介した,速度空間2次元あるいは空間1次元を加えた3次元でのFokker-Planck方程式の解を数値的に求めるいくつかの計算コードの現状と得失,また,これらと組み合わせて用いるべきLHの伝搬吸収コード(ray-tracing,full wave analysis,beam tracing)についても言及し,ベンチマークとして実験結果との比較を行い,それらの適用性を議論するとともに,次期装置に対して適用した結果を示した。

 ECHに関連する招待講演では,A.Becouletが“Hybrid and Steady-State Operation on JET and Tore Supraで,Tore SupraでLHCD 3分 密度2.5x1019で維持 0.3MWのECCDをcntrに追加してITBを形成,JETでLH+ICでReversed Shearの状態をエネルギー閉じ込め時間の2倍の8秒間維持,LHの電力を制御してターゲットのq-profileを維持したこと,また,N//の制御により電流分布の実時間制御も行う予定であることなどを報告をした。V.F.Shevchenko がElectron Bernstein Studies on COMPASS-D and MASTで,COMPASS-Dの高磁場側入射によって,X-Bの加熱・電流駆動結果を報告し,加熱は垂直入射が最も効率よく,電流駆動ではカウンター方向の電流駆動により,約100 kAの電流駆動を実証した。Beam tracing と準線形Fokker-Planckシミュレーションの結果とよい一致を示した。S.Kuboが Optimization of ECH in LHD” LHDでECH然電力2 MW以上を入射,中心電子温度10 keV以上を達成,伝送効率の最適化,焦点位置偏波の最適化を行っているとの報告をした。 R.Prater はECCD in DIII-D:Experiment and Theoryで,MSEを用いた電流分布の精密な測定を用いて,ECCDによる駆動電流分布をToray-GAコードと平衡計算+Fokker-PlanckコードのCQL3D(OH電流,BootStrap電流)から評価されるものとを比較し,よい一致を見ること,MHDの安定化も有効にでき,先進トカマク運転にたいしてECCDが有効であり,十分予測・制御可能であることを実証した。A.Pochelonは,Physics Studies of ECH and ECCD in the TCV tokamakで,TCVにおいて82.7 GHz 3 MW 118 GHz 1.5 MWでECCD, ECHの実験を行った結果を報告し,82.7 GHzで第二高調波加熱を行い,118 GHzで第三高調波加熱を行った場合,高エネルギー電子またはバルク電子に選択的に電力を注入できること,また,CQL3Dコードを用いた電流駆動の解析結果の報告も行った。Y.Takase はProfile Control and Plasma Start-up by RF Waves Towards Advanced Takamak Operationin JT-60Uで,JT-60Uでのセンターソレノイドを用いない電流立ち上げによるITBとHモードを持つ先進トカマクプラズマの生成,off-axisのLHCDとon-axisのN-NBIによるITBの領域の拡大,ECHによる中心電子温度23 keVの0.8秒間維持,ECCD効率に対する捕捉粒子の影響に関する理論と実験の比較,ECアンテナの実時間制御による新古典テアリングモードの抑制などを報告した。一般講演では,約20件の発表中,電子バーンシュタイン波の放射測定,加熱実験,検討に関するものが約半数を占めていた。

次にICRF加熱関係の発表では。プリンストンのNSTXでの高次高調波加熱実験ではNBIにRFを加えてテールを観測し,中性子発生率も増大することが確認された。また,磁場強度を下げ,ベータを上げると,周辺での電子による吸収が増え,イオンの吸収が減ることも確認された。このことはレートレーシングコードによる計算で説明がついた。またアンテナ周りの電場解析に関する発表が数件あった。例えばHFSSコードを使って,ASDEX Upgradeアンテナ周辺の電場を計算し,実際に計測した結果と比較しかなり良い一致を示していた。アンテナの負荷抵抗がELMの発生により変化しアンテナからの反射が増大するが,アンテナを二本つなげるという方法により広い範囲の負荷抵抗で反射を減らすことが可能になるとの報告もあった。また,速波からモード変換されたイオンバーンシュタイン波(IBW)あるいはイオンサイクロトロン波(ICW)を用いてプラズマを回転させることによる輸送の改善を目的とした研究が多かった。TORICコード,AORSAコードを用いてモード変換時のプラズマ内電場のシミュレーションが報告された。速波からICWへのモード変換の為にはポロイダル磁場が重要であることがシミュレーションで示された。またC-Modに於いてPhase Contrast Imaging により初めてトカマクでのモ−ド変換によるICWが実験により観測された。この他,高エネルギーイオンとICRF波動の相互作用に関する発表が数件あった。日本からはK. SaitoがLHDに於ける磁気軸位置とICRFにより生成された高エネルギー粒子の閉じ込めの関係および150 秒放電,2倍高調波加熱実験の結果について報告した。

 少し目先の変わった招待講演としてはJ.P.Squire(NASA) がInvestigation of Light Gas Helicon Plasma Source for the VASIMR Space Propulsion Systemで,ヘリコンプラズマをソースにして,ICRHの基本加熱を利用するロケットの加速の開発研究を紹介し,これまでに,ヘリコンプラズマでの効率よい高密度軽元素プラズマ(1×1019m-3)の生成に成功,ミラーの下流部にイオンサイクロトロンのループアンテナをセットして加速を行う予定であることを報告した。また,R.Freeman がArchimedes Plasma Mass Filterで核燃料廃棄物の質量分離にプラズマとイオンサイクロトロン加熱を用いるための検討と初期実験の結果を報告した。ソースにはヘリコンプラズマを用いてエンドプレートに10個の電極を挿入して径電場を作り,E×Bの回転を引き起こす,これに二組の4-coilアンテナで加速して,質量の違いで選択的に重い粒子は壁付近で,軽い粒子はエンドプレートで集める計画を発表した。

 なお,今回の会議は日米ワークショップ「先進領域におけるRF物理」と合同で行われた。本会議の講演終了後にも,別にセッションを設けて日本側参加者とアメリカ側参加者双方から4件つづの講演があり,議論がなされた。

 次回はMITが担当で2年後にDr. P. Bonoliを組織委員長として開催されることが決まった。


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最終更新日:2003.7.11
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