第8回核融合炉材料中における
水素同位体に関する国際ワークショップ

8th International Workshop on Hydrogen Isotopes in Fusion Reactor Materials

標記会議が,第17回制御熱核融合炉におけるプラズマ・壁相互作用国際会議(PSI)(合肥,中国 5月22-26日)のサテライトワークショップとして2006年5月29-30日,黄山,中国で開催されました.なお学会誌Vol.82-7月号に本報告が掲載されます。


 標記国際ワークショップが, PSIのサテライトワークショップとして開催された。参加者は日本からの3名を含めて45名であった。このワ−クショップはPSI国際会議の際に,常にサテライト会議として開催されており,PSI本会議では深く議論することができなかった課題のうち,特に材料中の水素(トリチウム)挙動について,現状の把握と今後の課題を抽出することを目的に開かれている。今回は2日の会期の内,1日半を発表とし,残りの半日では炭素中の水素挙動および,タングステン中の水素挙動,ブリスタリング等について集中した議論がなされた。全25件の報告のうち,炭素に関する報告が12件,タングステンが3件,モリブデン2件 ボロンカーバイド2件 その他5件であった。

 特に炭素材料中へのLong term tritium retention (長期的な炭素材料中へのトリチウムの蓄積)が,議論になった。これはTORE-SUPRAにおいて,放電のために導入される重水素の約50%が常に容器内に滞留してくことが見いだされており,その原因として(1)プラズマに直接面しない部分へ堆積した炭素による取り込み,または(2)炭素材料中の内部へ水素が拡散蓄積のいずれかが原因とされ,ガーヒングのマックスプランク研究所が,拡散による蓄積を示唆した事への強い反論等があったためである。 R. Causeyや筆者らが,炭素中の蓄積の研究の歴史を詳しく説明し,低温ではそのような拡散蓄積がおこらないことを諄々と説き,大半の出席者が納得した。そしてそれを確かめるための新たに実験が示唆された。タングステンのブリスタ発生機構についても大いに議論が盛り上がったが,機構解明には至らず更なる研究が必要ということになった。またITERがベリリウム,タングステン,炭素の3種類の異なった材料を使う効果についても議論があった。特にタングステンにベリリウムが混入すると非常に融点の低いBe12Wの組成を持つ合金が形成される事への懸念が表明され,これをどのように研究していくかについても議論がなされた。このようにホットなテーマでホットな議論ができるのがワークショップの醍醐味であり,出席者の多くが,excellent workshopと言ってくれたので,主催者の一人としても大満足であった。次回もスペイン,トレドで開催されるPSI国際会議のサテライトワークショップとして開催される予定である。

(2006年6月21日原稿受付)





最終更新日:2006.6.22
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