第17回制御核融合装置における
プラズマ表面相互作用に関する国際会議

標記会議が,2006年5月22-26日,安徽省の省都である合肥市の市庁舎の会議場で開催されました.なお学会誌Vol.82-7月号に本報告が掲載されます。





 本会議は,核融合プラズマ実験装置におけるプラズマと壁材料との相互作用,プラズマ対向材料,燃料補給とリサイクリング,周辺プラズマの計測と制御,不純物発生と輸送などのテーマについてヨーロッパ,アメリカ,日本を会場として2年ごとに行われてきた。今回は中国科学院等離子体物理研究所(ASIPP)がホストとなり,安徽省の省都である合肥市の市庁舎の会議場(写真参照)で2006年5月22日から26日まで行われた。合肥市は上海から西へ飛行機で約1時間のところにある人口400万人超の大都市(中国では普通らしい)である。

 会議には29ヶ国から318人の参加があった。参加者数が最も多かったのは日本で,ついでアメリカ,ドイツ,中国,フランスの順で,この5カ国で全体の約8割を占めている。発表の内訳は,レビュー講演が5件(日本1件),招待講演が20件(日本3件),口頭発表が38件(日本7件),ポスターが約250件であった。日本からは,トカマク型,ヘリカル型,ミラー型のプラズマ閉じ込め装置およびビーム装置や直線プラズマ発生装置などによる実験研究と理論シミュレーション研究や基礎研究など幅広い分野から研究発表がなされた。

 5件のレビュー講演では,JETでのITER-like Wall研究,定常運転に向けたPWI研究の主要課題,乱流輸送とプラズマ端,ITERにおいて予測される混合材形成とその特性,SOLでのプラズマ流とその輸送への影響が取り上げられた。ITER-like Wall研究では,現在ITERで使用が予定されているベリリウム第一壁とタングステンおよび炭素ダイバータというプラズマ対向材の構成における主要なPSI研究課題が紹介され,これらの研究課題に対するJETにおけるベリリウム第一壁とタングステンダイバータでの研究戦略が述べられた。低パワーハンドリングであるベリリウムの第一壁としての適合性,高Z材であるタングステンダイバータのプラズマ性能との両立性,ベリリウムの輸送とタングステンおよび炭素との混合材形成,そして長期のトリチウムリテンションの課題の重要性が指摘された。ベリリウム,タングステン,炭素の混合材形成の課題に関しては4番目のレビュー講演においても詳細が述べられた。ここでは,混合材研究の進展が紹介され,Be-richな共堆積層は低温で多くの燃料水素を吸蔵するが温度上昇によりC-richな共堆積層よりも容易に水素を放出すること,Be12Wのようなベリリウムとタングステンの化合物はタングステンよりもかなり低い融点を持つことなどが述べられ,さらなる研究の必要性が指摘された。定常運転に向けたPWI研究においては,瞬間最大のプラズマ性能を持続可能なものすることの重要性が述べられ,長時間定常運転を制約するものとして”Power exhaust”と”Density control”の問題が述べられた。高速粒子損失のパワーは少なくても熱負荷が局所化するため,長時間放電を妨げる要因となる。また,プラズマ対向壁等の燃料粒子吸蔵に関する研究の進展とそのメカニズムについての詳細も述べられた。ここでも,ベリリウム,タングステン,炭素の混合材の燃料粒子吸蔵は今後の重要な課題とされている。乱流輸送とプラズマ端では,周辺プラズマの乱流輸送のモデリングとシミュレーション等について紹介された。SOLでのプラズマ流に関しては,マッハプローブを用いた流れの計測からSOLプラズマ流の駆動機構,モデリングとシミュレーション,高速SOLプラズマ流の不純物輸送に対する影響等について述べられた。

 他の口頭講演(招待,応募)は,損耗されたプラズマ対向壁材料の物質移動,ダイバータの物理,定常運転,材料研究,輸送とプラズマ端での流れ,水素吸蔵,タングステンの損耗,壁コンディショニング,ダスト形成のセッションに分類されて行われた。ここでダスト形成がひとつのセッションとして取り上げられていることは,ダスト研究が近年精力的に行われていることの現われであり,LHDで収集されたダストの特性等が紹介された。ダスト形成という微視的現象が粒子バランスや閉じ込めといった巨視的現象やオペレーションにどのように関与するのかという観点でのさらなる研究の進展が期待される。プラズマ対向材料では,今回も炭素材料,タングステン材料が多く取り上げられていたが,ベリリウムに関する発表はあまり見られなかった。壁コンディショニングで今回興味深かったのは,トリチウムや共堆積層の除去を目指した酸素を用いたグロー放電実験等の発表(3件)である。除去の効率はプラズマ対向面に形成された共堆積層の構成に依存しているという報告等がなされた。定常運転では,LHDのICRF長時間放電やJT-60Uの壁飽和時の粒子制御が報告され,この分野における日本の寄与の大きさを感じさせた。

バンケットの最中に3つのポスターセッションの各セッションから5名ずつの優秀ポスター賞が発表され,賞状と記念品が授与された。日本からは佐々木氏(九大),渡辺氏(名大),宮内氏(静大),田中氏(東北大)の4名の若い方たちが受賞した。今後のさらなる活躍が期待される。また,会議の最終日にASIPPで現在建設中の超伝導トカマクEASTの見学があり,8月のファーストプラズマに向けて準備が進められていることが紹介された。既に超伝導コイルの冷却・励磁試験は終了したとのことであった。

 次回の会議は,スペインのCIMATがホストとなり,スペインのトレドで2008年5月26日から30日に行われる。なお,論文は査読後Journal of Nuclear Materials誌に掲載される。

(原稿受付:2006年6月29日)

 


最終更新日:2006.7.13
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