第3回 IFSA国際会議
Intertial Fusion Sciences and Applications

標記会議が2003年9月8日〜12日,米国カリフォルニア州モントレーで開催されました.なお学会誌Vol.79-11月号に本報告が掲載されます。次回 は2005年9月にフランスで開催される予定です。



田中和夫
(大阪大学大学院工学研究科・レーザー核融合研究センター)

 2003年9月8-12日,第3回Inertial Fusion Sciences and Applications (IFSA)国際会議が米国カリフォルニア州モントレーにて開催された。会議は,全米の慣性核融合に関連する大学,研究機関からLawrence Livermore National Lab., LosAlamos National Labo., Sandia National Lab., Naval Research Lab., University of Rochester, Lawrence Berkeley National Lab.およびGeneral Atomic社による共同開催で,Double Tree Hotel が会場となった。

会議には,ヨーロッパ,日本,アメリカから400人を越える参加者があり大盛況であった。日本からは,大阪大学,東工大,電力中央研究所,産業総合技術研究所,関西光量子,浜松ホトニクス,宇都宮大学,九州大学,理化学研究所などから多数の参加があった。会議の形式は,プレナリーセッション,招待講演,口頭講演において,慣性核融合の重要なトピックの最新情報が披露され,さらに詳しい情報は,ポスターセッションで報告された。

日本からは,「高速点火」の加熱に関するモデル実験を中心にFIREX計画,加熱実験の詳細,流体不安定性実験などが報告された。米国からは,進行中の国家プロジェクト「National Ignition Facility(NIF)」の進捗状況と点火ターゲットデザインが示された。NIFは,スケジュールどおり建設が進んでおり,すでに1ビーム(4クアッド)によるターゲット照射が開始された。これにより25 Mbar の衝撃波がすでに観測され,状態方程式計測に供されている。ターゲットデザインでは,前回のデザインより,ターゲットの表面粗さ,ラマンなどの非線形散乱,レーザービーム間のエネルギー移動などの観点から点火マージンに余裕のあるデザインが示された。昨年日本から示された高速点火モデル実験の成果に触発され,フランス,米国の国家プロジェクトにおいて高速点火実験にも対応できるよう,リヴァモア研究所の場合最大100キロジュールの加熱用レーザービームの参加が決められた。ロチェスター大学(米国),サンディア研究所(米国),ラザフォード研究所(英国),CEA(フランス)など主要研究所においても,高速点火研究および,超高強度レーザープラズマ物理に対応するため,大エネルギー 短パルスレーザーの建設ラッシュが始まろうとしている。フランスの国家プロジェクトであるLaser Mega Joule(LMJ)も順調に建設が進んでいる。米国,フランスとも2013年ごろに点火をめざしている。

会議のトピックスとして,レーザーを使った宇宙天文学,レーザープラズマ 線形相互作用,核融合炉工学,高速点火,大型レーザーシステム,診断装置,ターゲット製作,Zピンチ,輻射流体,レーザー加速,重イオンビーム核融合,X線源開発などがカバーされた。ターゲット製作においては,重水素燃料層の形成を助けるために,密度の低いフォームを重水素層のベースに使うターゲット製作が提案された。レーザー加速においては,イギリスのPWレーザーを用いた実験で電子を600 MeV までのエネルギーに加速した実験が報告された。X線源開発では,レーザー核融合のデータベースを背景にスタートしたX線リソグラフィ用の線源開発状況が日本から報告された。

会議途中,木曜日の午後は,バスで1時間半ほどの所にあるLawrence Livermore NationalLaboratory のNIF施設見学が行われた。多くの見学者が数台のバスに別れて見学に参加した。ただ,会議には,ビザが発給されなかったとの理由で,中国,ロシア,インドなどからの研究者の姿が一切見られず残念であった。会議の晩餐会は,カリフォルニアらしく海岸でロックバンドの生演奏をバックに行われ,アメリカ人研究者等が飛び込み演奏するなどとても盛り上がった。次回は,フランスで,2005年9月に開催されることが,Closing Ceremony にて宣言され1週間にわたる会議が閉会された。

(2003年9月24日原稿受付)


晩夏さわやかなモントレーの街で開催された
クラシシックカーフェスティバルに集まった
数多くの車の中のうちの1台(Chevrollet Corvett)

 


最終更新日:2003.10.24
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