第12回International Congress on Plasmas Physics会議



大阪大学工学研究科 浜口智志

第12回International Congress on Plasmas Physics(ICPP)が2004年10月25日から29日の5日間フランスのニースで開催されました。本報告は学会誌Vol.81-2月号掲載になります,





第12回ICPP の会議場 Acropolis Conference Center (ニース)。



 第12回International Congress on Plasmas Physics(ICPP)が,2004年10月25日から29日の5日間フランスのニースで開催された。会議場はニースの中心部に位置するAcropolis Conference Center で,旧市街へのアクセスにも便利な場所での開催である。プラズマ物理学全般を議論の対象とするこの国際会議は日本にも縁が深く,第1回会議は1980年に名古屋で開催された。この第1回会議は,第4回Kiev International Conference on Plasmas Theoryと第4回International Congress on Waves and Instabilities in Plasmasの合同会議として開かれたもので,ヨーロッパの伝統を受け継ぐ国際会議でもある。その後,2年おきに世界各地で開催され,1996年には一度名古屋にもどり,前回となる2002年はSydney で開催された。

 今回の会議では,招待講演が42件あり,そのほか,400件弱の口頭発表・ポスター発表があった。会議最初の講演は,昨年亡くなったRene Pellat 氏に対するGuy Laval 氏によるMemorial Lecture であった。そのほか,9件のPlenary 講演と32件のReview 講演がこの5日間の会議の招待講演であった。会議の主要なトピックとして,A: Plasma Applications, B: Space and Astrophysical Plasmas, C: Fundamental Plasma Physics D: Fusion Plasmas の4分野が挙げられているが,招待講演もこれに対応して,プラズマ物理に関連する幅広い分野から,様々なトピックが取り上げられた。例えば,日本からの招待講演では,Plenary 講演として京大の際本泰士氏が純電子プラズマ実験に関して報告し,Review講演で,核融合科学研究所の久保 伸氏がLHDのECRHプラズマ,京大の橘 邦英氏がマイクロプラズマ,また筆者がプラズマ表面相互作用に関して報告した。学術講演以外では,最終日である金曜日の午後に「Education and Transmission of Knowledge in Plasmas Physics」という題目の教育討論プログラムも開かれた。

 本会議の特徴は,プラズマの国際会議としてはめずらしく,「核融合プラズマ」にも「核融合以外のプラズマ」のいずれにも偏らない,バランスのとれた構成になっている点ではないだろうか。近年プラズマ物理学の内部でも専門化が大きく進み,プラズマに関連する様々な科学技術分野の最先端の研究成果を一度に知る機会はあまりない。筆者にとっても,本会議ではじめて知る興味深いプラズマ研究がいくつかあり,大変有意義な会議であった。

 また,本会議はフランスのITER誘致に対する強い意気込みの感じられる会議でもあった。会議の開会式で,開催地ニースおよびEU側のITER誘致候補地であるカダラッシュをともに含む行政区であるプロヴァンス・アルプ・コートダジュール(PACA)地域圏庁の第一副知事Patrick Allemand 氏が挨拶し,いかにPACA地域圏が科学技術研究に力をいれており,また,いかにITERの誘致を強力に推進しているかを力説した。また,会議の中休み(水曜日午後)の参加希望者のみを対象とした「ツアー」も,カデラッシュにある原子力研究所(CEA)の見学であった。ちなみに,本会議の翌週にポルトガルで開催されたIAEA国際会議でも,EUのITER誘致に対する宣伝活動は大々的なものであった。これに対して日本側のITER誘致宣伝が皆無であったのは印象的である。候補地の選定作業が最終段階を迎えた今,科学者に候補地の有利さや魅力をアピールしても無意味ということかもしれない。前回(2002年)リヨンで開催されたIAEA国際会議の日本のITER誘致活動の一環としてパネル展示されていた「ねぶた祭り」を懐かしく思い出した。

 さてICPPに話を戻すと,IUPAP (International Union of Physics and Applied Physics) のCommission on Plasmas Physics のChairman であるA. Sen 氏も開会式で挨拶した。氏によると,ICPPの参加者数が近年減少傾向にあるとのことである。この原因として考えられるのは,ひとつは,先にも述べたが,プラズマ物理学内部の専門化が進み,本会議のようなプラズマ物理学全体の統一的な発展を目指す会議が,逆に総花的にみえて魅力に欠けてしまうこと,もうひとつは,これも関連したことだが,より専門に特化したプラズマ物理学関係の国際会議の数が近年きわめて多いことだろう。プラズマ物理学の「中興の祖」ともいえる核融合研究が始まった当初は,極めて学際的であったプラズマ物理学も,今は学問としての成熟期を迎えているのかもしれない。プラズマ物理学の今後の新しい発展はどこにあるのか,発足から四半世紀を経たICPPは,時代の先を読んだ上での自らの変革が求められているようである。

追記:プログラムとプロシーディングスのPDFがhttp://www-fusion-magnetique.cea.fr/icpp2004/にアップロードされています,会議での発表内容に興味をお持ちの方は,是非ご参照ください。

(2005年1月6日原稿受付)


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最終更新日:2005.2.1


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