第11回プラズマ物理国際会議 ICPP2002

 佐藤浩之助(九州大学応用力学研究所)

 標記会議が 2002年7月15日から19日まで,オーストラリアのシドニーで開催された。

 ICPP(プラズマ物理に関する国際会議=Int. Conference* on Plasma Phys. [*1998よりCongressと変更])は,「4th International Congress on Waves and Instabilities in Plasmas」と「4th Kiev International Conference on Plasma Theory」との合同会議として,1980年に初めて名古屋にて開催されて以来,Goeteborg (1982), Lausanne (1984), Kiev (1987), New Delhi (1989), Innsbruck (1992), Foz do Iguacu (1994), Nagoya (1996), Praha (1998), Quebec (2000) と2〜3年に一度のペースで開かれてきたものであり,プラズマ物理を主点にして広く討議できる重要な会議として位置づけられてきた。

 今回の会議の参加者は,(申し込み時点では50か国から約560人であったが)最終的には33か国約300人となり,開催地が影響したためかいつもよりやや少なめの会議となった。主なところは,日本から64,地元のオーストラリアが54,米国から44,ドイツ19,中国14,ロシア12,フランス・ブラジル 各11,インド9人などであった。

 会議の内容としては,宇宙・天体プラズマ,実験室プラズマ,プラズマプロセス・プラズマ応用,核融合プラズマ等々に関係する広い分野から研究者が集まり,プラズマ物理に共通する視点から研究成果の発表や情報交換を行うとともに,それぞれの分野からのトピックスについて招待講演を行うことにより,プラズマ科学研究の一層の発展を図るものである。今回も多様なプラズマ物理の分野から興味ある講演があり,会議の性格上地味ながらもそれぞれに進展が見られた。

 招待講演 (Plenary) は,D. Melrose (U. of Sydney) のパルサーの話,K. Itoh (NIFS) のプラズマ乱流と構造形成の理論,B. Green (ITER Team) のITER/核燃焼プラズマの物理,G. Saibene (Max Planck I. f. PP)の JETにおけるHモード物理の進展,K. Tanaka (Osaka U.) の阪大における高速点火研究,A. Title (SLISR) の太陽の科学,G. Morfill (Max Planck I. f. ETP) のダストプラズマ物理,M. Yamada (PPPL) の磁気リコネクションと磁気回転の物理に関する実験室研究の話など9件があったが,全般的にその内容にははっきり言って格差があり,日本および米国からの話のレベルが印象に残るものとなった。午前の後半には Review Talk が2つの並列セッションで計40件(基礎実験4,プラズマ応用5,宇宙天体プラズマ11,磁場核融合10,慣性核融合8件など),また午後の前半には Topical Talk が4つの並列セッションで計42件(基礎実験3,プラズマ応用9[環境問題への応用を含む],自己組織化と輸送4,宇宙天体プラズマ14,磁場核融合9,慣性核融合3件など)あり,それぞれ特色ある成果が発表された。また,ポスター発表は全体で380 件(申し込み件数)であったが,取り消しも多く見られた。日本では昨今『産学連携』が叫ばれており,プラズマ物理の分野だけではなく一般に応用的研究がもてはやされる傾向が強いが,この会議で感じたのは,外国では「基礎的実験」をかなり活発に進めているということであり,長期的見地からは学ぶべきではないかとの印象を深くした。

 ところで一般的に会議においては,話題が多いとどうしても並列セッションが多くなる傾向があるが,『ICPP』としてはプラズマ物理全体を通して見る視点の機会がそれだけ希薄になり会議の特徴が失われかねない事柄であり,今後考えていくべき問題点であろう。また会議運営技術の面からは,今回,ポスターセッションの配置・明るさ,オーラルの音声・映像などにいくつかのの問題があり,「他山の石」とすべきかと思われた。

 なお,前回の会議の際に 2004 年の開催はアルゼンチンと決まっていたが,同国の諸般の事情により開催が困難となったため,今会期中に開催された IAC (国際アドバイザリー委員会:日本からは佐藤徳芳先生と筆者が出席)においてあらためて提案と検討が行われ,次回 (2004 年) はフランスの Nice で開催されることが決まった。また同時に,確定ではないが次々回 (2006年) は Kiev となった。開催地に関して IAC でこれまで積み上げられてきた概略の共通合意としては,「できるかぎりヨーロッパ,アジア/オセアニア,南北アメリカの3地域で持ち回り開催する」ということであったが,開催地の提案が少なくなっており,今後は,必ずしもスムーズなローテーションとはならない可能性も想定されている。

(2002年10月29日受理)



写真はこちら

 


最終更新日:2002.12.6
(C)Copyright 2002 The Japan Society of Plasma Science and Nuclear Fusion Research.
All rights reserved.