3rd IAEA Technical Meeting
on ECRH Physics and Technology for ITER
 


吉村泰夫(核融合科学研究所)

標記の会議が2005年5月2日から4日まで,イタリア コモ市の歴史的建造物Societa del Casinoにおいて行われました.本報告は学会誌Vol.81-7月号掲載になります.

 上記IAEA TMが2005年5月2日から4日まで,イタリア コモ市の歴史的建造物Societa del Casinoにおいて行われた。なお同じ場所で7th Steady State Operation ITPA Topical Group Meeting が5月4日から6日まで行われているが,その報告は他に譲る。IAEA TMには全16カ国から61名の参加があり,日本からは原研の坂本,藤井,井手,高橋(敬称略)と核融合研の吉村が参加した。計41件の発表はすべて口頭で,大きく”Gyrotron”,”Launcher and Transmission Line”,”Application”の3カテゴリーに分けられ,それぞれほぼ同数であった。”Gyrotron”カテゴリーではITERに向けたジャイロトロン開発について,高出力化,長パルス化に向けた開発の進展状況が報告された。”Launcher and Transmission Line”カテゴリーでは,ITERでのECRH入射システムについての報告が主であり,特にITER上部ポートからの入射について,リモートステアリング方式とフロントミラー入射方式の双方からの提案およびその比較などがあった。”Application”カテゴリーでは,現存装置でのITER運転シナリオを意識した実験結果などが報告された。また,2日と3日の18時から19時半までは討論に当てられ,それぞれMax PlanckのV. ErckmannとH. Zohmの巧みな司会のもと,入射システムについて,多周波数発振ジャイロトロンの実用性について,加熱位置の最適化について,などのテーマに関して活発な議論が行われた。報告された主なトピックスについては以下のとおりである。

 

●Gyrotron

・これまでに170GHz, 500kW, 100sおよび130kW, 600sの運転に成功している。CW運転のために,ジャイロトロン管内の放射器の改善,冷却系の増設を行った。また,1.5MW級の連続発振に対応する高次モードTE31,12を用いた発振実験を行い,これまでに1.1MWの出力に成功した。(原研 坂本)
・ASDEX向けに105/140GHzの2周波数発振ジャイロトロンを開発した。出力窓には間隔可変のダイヤモンドディスク二枚を使用している。CWジャイロトロン開発ではインド向けで82.7GHz, 200kW, 1000s,LHD向けで84GHz, 160kW, 3900sを達成した。75GHz, 800kW, 100msのジャイロトロンの効率は70%に達した。(ロシアIAP Denisov)
・W7-X向け140GHzジャイロトロンの現地試験で,900kW,30分の運転に成功した。その後リークが発生し,原因調査中。(アメリカCPI Felch)
170GHz, 2MW, CW(1hour)同軸ジャイロトロンの開発のために,CRPPにテストスタンドを建設する。液体ヘリウムプラントが建設中である。2006年に1s,2008年に60s達成を目標とする。(スイスCRPP Hogge)
・JT -60Uでの長パルス運転のために,カソードヒーター電源制御とアノード電圧制御を組み合わせる手法を開発した。4本のジャイロトロンパルスを時間で直列し0.4MW,45秒のパワー入射を行った。(原研 藤井)
・ジャイロトロンに内蔵するモード変換器の最適化計算アルゴリズムを開発した。回折損失を1%以下に抑制することが可能。(アメリカ Neilson)
 

●Launcher and Transmission Line

・水平ポートではフロントミラーからの入射が行われる。超音波モーターを用いたミラー駆動機構の100万回の耐久試験を行い,健全性を確認した。(原研 高橋)

・上部ポートの入射方法については,リモートステアリング方式とフロントミラー入射方式に関する報告がミラーの構造から実験に対しての検討まで幅広く15件以上あり,研究者の層の厚さを感じさせた。概して,工学的観点からはリモートステアリング方式,実験上の自由度確保という観点からはフロントミラー入射方式に力点が置かれた。
・DIII-Dのコルゲート導波管の伝送効率実測値70-76%は計算値80-90%よりも有意に大きく,ロスの原因を調べる必要がある。(アメリカGA Callis)
・リモートステアリングアンテナのハイパワーテストにおいて,直線矩形導波管を用いた場合には800kW, 10sまで問題ないが,マイターベンド2個を用いた導波管では500kW, 10msでアーキングが起きた。(ドイツMax Planck Gantenbein)

 

● Application

・TCVにおいて,上部ポートから共鳴面に沿ったビーム入射により,3keVのプラズマへの3次高調波入射で80%以上の吸収効率を得た。3次高調波加熱そのものによるsuprathermal電子による吸収が効いている。(スイスCRPP Alberti)
・DIII-Dにおいてq=2有理面に時間的に追随させたECCDによりNTM抑制に成功している。(アメリカGA Luce)
・JT-60U ECCDによるNTM抑制の効率化のためには,早期入射,ビーム入射方向の正確さ,ビームサイズを磁気島幅よりも小さくすることが重要である。ECRHを用いて,中心ソレノイドコイル通電無しのプラズマ立ち上げに成功した。(原研 井手)
・ITERでの低磁場運転におけるECCD効率を評価した。二次高調波共鳴面が外側に位置する3.6T程度の磁場強度では,浅いトロイダル方向入射角においては大河効果により電流駆動効率が著しく低下する。(アメリカGA Prater)
・LHDにおいてその定常プラズマ維持に対する有利性を生かして,ECH単独による65分のプラズマ維持を行った。(核融合研 吉村)

 

 なお会議用HP http://www.ifp.cnr.it/iaeatm/ ではそれぞれの発表のアブストラクトと発表ファイルがダウンロードできるようになっていますので,より詳しいことを知りたい場合はそちらを参照してください。

(2005年6月23日原稿受付)


 世界の大型装置が,互いに連携をとり,こうした会議で決めた目標実現に向けて,明確な方針を持って実験装置を整備し実験を遂行していることがよくわかった。

ECRHおよびECCDはかなり重要なプラズマ制御ツールと位置付けられ,DIII-D,AUGで装置のアップグレードが進行中である。

コモは電圧の単位名にもなったA. Voltaの生誕地で,街の中心部の広場にはVoltaの像が建っている。


また観光地として有名なコモ湖に面しており,晴天だったこともあって風光明媚なという形容がぴったりな場所であった。



 

イタリア国内のみでなくドイツやフランスからも観光客がやってくるとのことで,街中の広場にはレストランからのテーブルが並べられ,たくさんの人たちがそこでほとんど一日中楽しそうに飲み食いしていた。



会議期間中はそれを横目に会議場とホテルを往復するつらい日々であった。会議場は昔の社交場を改装したもので,確かに内装も立派である。



イタリアのパトカー?のサイレンはやたらとけたたましく,会議中にも何度も聞こえてきて閉口した。


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最終更新日:2005.7.6rev(6.24)


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